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2010年 08月 06日
「小さいおうち」(中島京子著)を読みました。
直木賞の選評やあらすじを聞いたときには さほど興味はわかなかったのですが 書店に並んだこの本を見たとき レトロな装丁の温かな雰囲気に 一目で読みたくなったのでした。 和風の紙質に赤レンガ色の背景と飾り罫。 何ともいえぬ雰囲気がありました。 そして、導入部の秀逸さ。 米寿を超えた老婆と若い女性編集者の 何とも噛み合ない会話。 この若い編集者は、その後、出てこなくなってしまうのですが それがちょっと残念。 彼女に代わって過去と現在をつなぐ道化役として 大学生の甥っ子が登場するのですが 女性編集者と二人で語り部である老婆に絡んだほうが もっと面白くなったような気がします。 物語は老婆が若き日の想い出をノートに綴る形で 戦前から戦中の東京を舞台に繰り広げられます。 振り返れば、まさに昭和の歴史であるのですが 庶民は歴史の中ではなく日常の中で生きていることが 当時の風俗、出来事ともに語られ 激動の時代を、ときに滑稽なまでにのんきに過ごします。 もちろん、目次を見たときに 最終章だけゴシックになっていて 何か仕掛けがあるとは思っていましたが 後日談の形で見事に物語の周囲と奥行きを広げてくれます。 おそらく著者は、のほほんとした物語に終わらさずに 戦争の影をきちんと描いておきたかったのでしょうが その分、ざらざらした読後感が残ります。 このあたりも、女性編集者が登場して 当時のメディアのインチキさに驚きながら 何かに気づくような希望があればよかったように思います。
by noririn_papa
| 2010-08-06 22:26
| 小説・本
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