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2012年 12月 22日
いつか花村萬月さんの小説を読みたいと思いつつ
なかなか手にする機会がなかったのですが 今回、手頃な厚さで面白そうだなと書店で手に取ったのが この「希望(仮)」という不思議なタイトルの本でした。 花村さんのブログ「『夜がきた』と書いてはいけない」に 衝撃を受けたのは5年近く前の話です。 『夜』という言葉を遣わずに 『夜がきた』ということを描写するのが小説家である という内容で、そういうことを意識すると 文章を書くのがとても難しくなりました。 当時の自分のブログ さて、今回の小説「希望(仮)」ですが 2010年から2012年にかけて書かれています。 つまり、書き出した後に3.11が起きているのです。 これがこの作品に与えた影響は大きいと思います。 物語は1970年代後半のアウトロー的青春放浪記ですが 3.11がなければ著者は主人公を当時の原発という場所に 紛れ込ませることもなかったかもしれません。 主人公は「科学者がお湯を沸かすために核分裂を使う」原発内での 過酷かつ杜撰な管理下での労働を経験します。 30年前の話とはいえ 同じ施設で同じ原理で現在まで続く原発。 労働条件は表向き改善されたとしても 下請けに依存する労働力と 企業の隠蔽体質が改善されていなければ 今も現場レベルではかなりの問題がありそうに思われます。 加藤登紀子さんの歌う「原発ジプシー」をYoutubeで聞きながら クリスマスに光り輝く街のイルミネーションを 複雑な気持ちで眺めてしまうのでした。 もちろん主人公の放浪は原発だけに収まらず 山谷からはじまり、沖縄まで流れていきます。 最初は主人公の理屈っぽさが鼻について これが花村さんなのかと思いましたが 主人公が理屈の通用しない世界に入ってからは さくさく読めました。 ドロップアウトした世界から見る30年前の社会が まるで火薬庫のようにいろいろな問題をはらみつつ 現代の希望へと続いているのですね。
by noririn_papa
| 2012-12-22 13:54
| 小説・本
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